上司が変われば、部下が変わる?!

部下のモチベーションアップの特効薬とは?

自分の既成概念に気づき、自分と相手をともに活かす交流をめざす
『セルフカウンセリング』を普及するNPO法人です。

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写真はイメージです(PhotoACより)

企業研修の中で、「部下の遅刻が直らず困っている」という上司・先輩の話を聞くことがあります。

リモートワークが増え、出勤日数が減っている状況でも部下の遅刻に頭を悩ませている上司・先輩はいらっしゃることでしょう。

 

小倉さんも部下のナオキさんの遅刻が多いことに困っていました。

ナオキさんが遅刻をするたびに、小倉さんは遅刻の原因を聞いて、ナオキさんに「遅刻は自分のためにもよくないから、遅刻はしないように」と言い聞かせていました。

ナオキさんも、その時は「分かりました」と言いますが、遅刻が減ることはありませんでした。

 

ある時、小倉さんはセルフカウンセリングを取り入れた社内研修に参加しました。

セルフカウンセリングには専用のフォーマットと書き方のルールがあります。

小倉さんは藁にもすがる気持ちで、その専用のフォーマットにナオキさんとのやりとりを書いてみました。

 

【小倉さんとナオキさんのやりとり】

状況:8月×日の朝、8時30分始業のところ、ナオキさんが午前8時45分頃に事務所に入ってきた。

 

ナオキさんが午前8時45分に事務所に入ってきました。

私は〈またか。慌てた様子もなく普通に入ってきやがる。

始業時間はとっくに過ぎている。何度言い聞かせても遅刻が直らない。

一体どういうことなんだ!社会人としての自覚がなさすぎる。

入社3年目というのに社会人の基本が全く身についていない。

困ったもんだ。同期入社のマサシはしっかりやっているのに、ナオキはいつまでも手がかかる。

このまま遅刻が直らなかったら、同期とも差がつくことがわからないのか!

分かるように言い聞かせないと‼〉と思いました。

私は「おう、ナオキ、遅かったじゃないか。

どうしたんだ。何かあったのか」と声をかけました。

すると、ナオキは「はい、すみません。

今日こそ遅刻しないようにと思って早く出たのですが、○○線が遅延していて遅れました。

遠方から通っているため、どうしても、どこかで電車が遅延しています。何とかしてほしいです」と言いました。

私は〈おいおい、何とかしてほしいのはこっちのほうだよ!

毎回同じ言い訳を聞かされる身にもなってくれよ。

確かに遠方から通っているかもしれないが、毎回、電車が遅延するのか?

同じウソばかりつきやがって、腹が立つ!〉と思いました。

私は「電車が遅延することは仕方がないな。

電車の遅延を見込んで早めに家を出るように言っているよな。実行しているのかな?」と言いました。

ナオキは「やっていますよ。だから15分しか遅刻しないで済んでいるんですよ。これでも精一杯やっています。

すみません。これから顧客との打合せがあるので、また後でゆっくり伺いたいと思います。

では失礼致します」と言いました。

私は〈打合せか、顧客との打ち合わせはちゃんとできているのか!

今日は仕方ない。どうすればナオキは時間通りに来てくれるのか。

困ったもんだ。今度しっかり時間をとって言い聞かせないとダメだな。〉と思いました。

私は「そうか、大変だな。分かった。今度時間を取って話し合おう」と言いました。

 

私とナオキのやりとりを書いて読み返してみると、私は、ナオキには普通に話しているつもりでしたが、ココロの中では繰り返し遅刻をするナオキに腹立たしい気持ちを終始持っていたことに気づきました。

冷静に話していたつもりでしたが、その腹立ちは、ナオキに伝わっていたのではないかと思いました。

 

更に腹立ちだけではなく、同期のマサシと比較してこのまま遅刻を続けていたらナオキがマサシに劣ってしまうのではないかとナオキの将来を心配していることにも気づきました。

 

最初はナオキに分かるように話そうと思っていましたが、電車の遅延が遅刻の理由と聞いたことで、同じ言い訳ばかりするナオキにイライラしている自分にも気づきました。

 

もう一度読み返して、私はハッとしました。

自分が最初から最後までナオキを否定し続けていたことに気づいたからです。

ナオキが遅刻することで、ナオキの仕事までうまく運べていないのではないかと疑う気持ちまで持っています。

私は〈こんなに否定され続けていたら、何を言われても、聞く気にならないだろうな〉と思いました。

 

ナオキとのやりとりを書いた私は、ナオキの気持ちをそのまま受けとめながら、自分の気持ちを伝えていくことを心がけようと思いました。

 

上司から支持を受けて部下が業務を遂行するという関係の中では、部下は上司から認められたいという願いを持っています。

上司から認められることがモチベーションにつながります。

部下が上司の期待に応えようと業務を行い、その結果を上司が認めるという関係の中で信頼関係は深まります。

その積み重ねの中で「この上司のために頑張ろう!」というやる気が引き出されます。

信頼関係が深まることで、どうすれば遅刻せず、出社できるかをともに考えていかれるようになるでしょう。

 

(セルフカウンセリングは商標登録されています。)

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