夫婦③ー岸本さん(仮名)の体験記ー

写真はイメージです(イラストACより)
写真はイメージです(イラストACより)

セルフカウンセリング®という心理学(自己発見心理学)に基づいて、企業研修としてコミュニケーショントレーニングを行ったり、コミュニケーショントレーナーの資格取得のためのセミナーを企画運営しているNPOです。このコラムでは、セルフ・カウンセリングにまつわる様々な情報をお伝えしています。

 

セルフ・カウンセリングの創案者である渡辺康麿先生は、かつて公民館や社会教育館で、主婦の皆さんを対象にセルフ・カウンセリングの手ほどきをしていました。

そして、参加者の皆さんの体験記を、「妻たちのセルフ・カウンセリング」というタイトルで雑誌に連載していました。

その体験記の一部を、ご本人の承諾を得て、ブログで紹介していきたいと思います。

 

今回は、岸本芳恵(仮名)さんの体験記の第3回です。(全6回)

 

(前回までのあらすじ)

ご主人は、岸本さんが外出すると不機嫌になります。

岸本さんはご主人の顔色をうかがいながら外出することに窮屈さを感じています。

もっと気軽に外出できるようになりたい、との思いからセルフ・カウンセリングを学び始めました。

講座に参加して、セルフ・カウンセリングの書き方のルールを学んだ岸本さん。

書き方のルールに沿って、ご主人とのやりとりを書いてみました。

記述に書いたのは、お嬢さんの通う中学校のPTAの役員についてのやりとりです。

岸本さんは、昨年1年間役員を引き受けました。

もう1年お願いしたいという依頼を受けた時、岸本さんは〈引き受けたい〉と思いました。

岸本さんは、役員の仕事にやりがいを感じていたのです。

けれども、ご主人は「1年間やったんだから、もうやらなくて良いじゃない」と言いました。

二人の気持ちはくい違ってしまいました。

 

岸本芳恵(仮名)さんの体験記 その3

 

◆自分の行動と相手の行動を分けてよんでみよう

記述は、思ったよりも、スラスラと書くことが出来ました。

書きあげた記述を講師の先生に見ていただきました。

 

先生は「この時の会話をとても良く思い返しておられますね。

せっかく良くお書きになれているので、この記述を何度も読み返してみましょう。

そのとき、まず、自分の行動と相手の行動をわけて読んでみましょう。

記述用紙には、真ん中に縦線が入っていますね。

その縦線から左側に相手の行動を書き、右側に自分の行動を書いています。

つまり、まん中の縦線から、右側だけを読めば、自分の行動だけを振り返る事が出来ます。

そして、左側だけを読めば、相手の行動だけを振り返る事が出来ます。

一度、相手と自分とを分けて、それぞれの気持ちの流れを読み取りましょう。

そして、その上で、相手と自分とのかかわりを、もう一度考えてみましょう」とおっしゃいました。

 

◆岸本さんの記述の抜粋

夫は「来年はもういいんだろう?

今年やったんだから」と言った。

 

私は〈『今年もやりたい』なんて言ったら反対するだろうな。

私が出かけるのを嫌がっていたもの〉と思った。

 

私は「それが、執行部のお母さんから、来年も残ってねとお願いの電話があったのよ」と言った。

 

夫は「一年間やったんだから、もうやらなくたっていいじゃない。

誰か他にやれる人はいないの?」と言った。

 

私は〈やっぱり、反対なんだ。

どうしてそんなに反対するのかしら〉と思った。

 

私は「担任のT先生も、他の方は下に小さいお子さんがいるから、なかなか自由に動けないけれど、

岸本さんは最後のお子さんだから、ご奉公と思ってがんばってとおっしゃっているのよ。

T先生には、うちの子が部活でお世話になっているから、仕方がないでしょう」と言った。

 

夫は「PTA役員は、同じ人が何回もやるものじゃないでしょう。

いろいろな人がやるのが本来の姿だと思うよ」と言った。

 

私は〈そんな事、私だって分かっているわ。

でも、なかなかそうはいかないのよ〉と思った。

 

私は「それは、確かにそうよ。

でも、役員をやれない状況の人もいるのよ」と言った。

 

夫は「そうだからと言って、無理に引き受けなくてはいけない事はないさ。

やらないときめたら、受けなければいいさ」と言った。

 

私は〈なんで、そこまで反対するの?そんなに私を家の中に閉じ込めておきたいの?

自分の都合で外出する時は、家族を置いてさっさと出かけるクセに。

なんて、自分勝手な人なの〉と思った。

 

◆自分の本心を伝えていなかった

私は、家に帰ってから、記述をもう一度読み返してみました。

 

まず、自分の欄だけをくり返し読んでみました。

読んでいるうちに、この時、感じていた、もどかしいような、苛立たしいような気持ちがよみがえってきました。

記述の一文一文から〈私の気持ちを、どうして分かってくれないの〉という強い思いが、にじみ出ているような気がしました。

〈私の気持ちを分かってくれない夫に対して、苛立たしいような思いでいたんだな〉と感じました。

〈「私の気持ちを、どうしてわかってくれなぃの」と私は思っているけれど、私のどんな気持ちをわかってくれないと感じていたのかな〉という思いが、ふと思い浮かんできました。

すると〈私は、来年も役員をやりたい、という気持ちを主人に分かってもらいたかったんだ〉という答えが自然と思い浮かんできました。

私は、もう一度記述を読んでみました。

 

私は〈あっ!〉と思いました。

 

私は来年も役員を引き受けたいと思っている事を、まったく口にしていなかったのです。

私は、自分の本心を夫に伝えているつもりでした。

ところが、記述を書いて、読み返してみた時、自分の本当の気持ちは何も伝えていない事に気づいたのです。

私は、夫に「やってほしいと言われているから」とか、「先生にも言われているから」とか、

「先生に悪いじゃない。受けないわけにはいかないから」とか、周りの人の言葉や状況を伝えているだけなのです。

 

つまり、私は、他人のせいにして、私は「やりたくないけれども、仕方がないからやらざるを得ないじゃないの」というように訴えていたのです。

(つづく)

 

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